四季折々、山旅で見つけた自然との出会い
自然の中は危険がいっぱい |
自然は、すばらしさの半面、おそるべき危険な存在でもあります。豊かな自然として常に良いことずく めではありません。むしろ豊かな自然ほどそれが秘める危険も“豊か”であると考えていいのではない でしょうか。人類は何万年に及ぶ長い年月の大部分を自然とともに生活してきました。そして、自然の もつ限りない恩恵を受ける反面、はかりしれないおそろしさや危険にも直面し、それをいやというほど 経験し、身にしみて心得てきたのです。 同じ地球上に生れ、我々人類と生存を宿命とする生物のなかに、われわれ人類に対して危険をもたらす ものがいくつかあります。猛獣、毒蛇、毒魚、毒虫、有毒植物などがその代表です。こういった自然か らの危険を知り、この危害から身を守るためには、自然のしくみをよく知り、適切な対処のしかたを学 ばなくてはなりません。自然にはこうした危険な反面もありますが、自然のもつ危険性は、その性質、 状況をよく知り、それに対応する心がまえと周到な準備など心得ておけば、けっしてこわいものではあ りません。私たち登山者が自然観察をやると言うことは、登山技術を身につけると同時に、危険との遭 遇に対して慌てず恐れず、もっとも安全な対処方法を身につけるには絶好のチャンスでもあります。
■地学的要因によるもの 1.気象的災害:天候激変、日射、熱射、寒冷、大雨、吹雪、台風、落雷など 2.火山爆発:溶岩や火砕岩流の流出、熱風、火山弾、山火事 3.地震:家屋や器物の倒壊、山崩れ、津波、火災 4.水害:洪水、高波、暴風雨、山津波、雪崩 ■生物的要因によるもの 1.植物:触れることによる痛み、かゆみ、かぶれ、食中毒、花粉症(アレルギー)など 2.動物:咬傷、刺傷、毒液の注入、毒液に触れることによる痛み、かゆみ、かぶれ、食中毒など 3.病原伝播:伝染性病原(ツツガムシ病、野兎病、狂犬病など)、 寄生性病原(ダニ、住血吸虫、線虫、エキノコックス、アニサキスなど) ■以上のほか、自過失が上記の自然災害と相乗的に発生して、事故を起こすことが多い。
「君子危うきに近寄らず」という諺があります。危険に対して最も安全確実な方法です。しかしこれで は自然観察どころか山に入ることすら出来ません。そこで危険に対しては「安全限界までは行くが、危 険圏内には入らない」「危険物(危険生物含)に触れない」「危険が発生したら逃げる」「危険を断乎と して排除(防御)する」などの対応策を事前に研究して、あるいは臨機応変に考える必要があります。 危険には予測できるものと予測しがたいものがあります。予測できるものであっても、その危険に対す る知識が欠けていたり、はじめての土地などでそこの様子がわからないと、予測しがたいケースとまっ たく同じ状況になります。多くの危険は、場所によって少しずつ違った特色をもつものです。予めその 土地の人や事情に通じている人から、詳しく聞いておくことも大切です。 |